さすらいのジェニー(著者/ポール・ギャリコ 翻訳/矢川 澄子 挿画装幀/建石修志)ジェニィ(翻訳/古沢 安二郎)
『さすらいのジェニー』と『ジェニィ』というタイトルの翻訳があります。翻訳家や装幀が違いますが、いずれも原書はポール・ギャリコの「Jennie」です。
私は20年以上前、何歳だったか忘れましたが、10代の頃に古沢安二郎さん翻訳の『ジェニィ』を読んだことがあります。
そして、最近、矢川澄子さん翻訳の『さすらいのジェニー』を読みました。
ピーターは8つの少年です。父は陸軍の大佐、美しい母はしょっちゅう用事で家にいないので、付き添いのばあやとほとんど生活しています。
ある日、ピーターは公園の柵の上にいた小さな雌の虎猫をなでたくて通りを横切ります。
そして、目覚めた時にはなぜか真っ白な猫に変身していました。
猫になってしまったため、猫嫌いなばあやにつまみ出されてしまいます。
外へ出てしまって猫の習慣や掟などを知らない中身は人間のピーター。
猫になって最初に大失敗を犯しますが、その事件があったからこそ、ほっそりした雌の虎猫ジェニーと出会います。
そして、ジェニーとの旅が始まります。
ジェニーは至れり尽くせりでたくさんの猫生活についてを伝授してくれます。体を張って、ピーターに教えます。
よく、困った時、一息入れて考えをまとめたい時、落ち着きたい時などに猫は体をなめます。2、3回ぺろぺろってなめますよね。
その描写がしょっちゅう出てくるんですが、そこがとても好きです。
それも、体のどの場所(背中とか胸元等)をぺろっとなめたかもきちんと描写されていたりして、猫の姿が映像で浮かびます。
ピーターを成長させ、暖かい場所にたどり着けたのは、ピーターと共に旅したジェニーの存在があったからなのでしょう。
主人公はピーターであるのに、タイトルがジェニー。この『さすらいのジェニー』では、表紙は完全にジェニーのみしか描かれていません。
(『ジェニィ』では、なぜか白猫のピーターと白黒猫ですが。私が10代の頃読んだ『ジェニィ』ではこの表紙ではありませんでした。)
読後、ジェニーを愛おしく思いますね。会いたいって切なくなります。表紙を見ると、泣けてきます。
この『さすらいのジェニー』では中の挿絵も素敵ですし、装幀も素敵です。挿画・装幀は、建石修志さんです。鉛筆画だけの作品もありますが、ネットで検索すると、すごい。幻想的。鉛筆っていいですね。どんどん話はそれますが、なぜ、小説の中には挿画をした方の名前を入れないのでしょうね。かなり重要な位置にいると思うんですけど・・・
女の私から見ても、ジェニーはとても魅力的!優しくて気が利いて、強がりなところもあり、美しいです。
本当にこの小説は素敵です。何度も読みたくなります。また、ジェニー・ボールドリンに会いたくなります!